民泊運営のための保健所の事前確認とは?チェック項目や対策を解説!

サラリーマンが民泊を運用する上で保健所に事前に何を確認したらよいか、わからないものです。民泊営業の届出申請が通るかも不安ですよね。

この記事では、民泊運営のために保健所が行う事前確認の内容や、ポイントを説明します。記事の後半では、3つの自治体の具体例を出してわかりやすく説明します。

記事を最後まで読むと、保健所が事前確認する項目がわかるとともに、どのようなところに気をつけたらよいかわかります。

目次

民泊運営のための保健所の事前確認とは?

民泊を運営する上で、保健所が事前に確認する事項があります。例えば以下の5点です。

  • 構造設備基準を満たしているか
  • 設備や備品は清潔に保っているか
  • 寝具やシーツは宿泊者ごとに洗濯したものに取り替えているか
  • 感染症が発生した時の通報体制
  • 浴槽や浴室の衛生について

保健所がこれらをチェックするのは、違法民泊の苦情をなくすためにも、適切な民泊運用が求められているからです。

保健所が確認するポイント

保健所が確認するポイントは以下の2点です。

  1. 構造設備基準を満たしているか
  2. 水回りの設備は重点的に見られる

ポイント1: 構造設備基準を満たしているか

民泊の構造基準とは以下の9点です。主に床面積やトイレ、浴室などで決められています。以下に宿泊者の衛生の確保について抜粋を示します。

  • 宿泊者一人当たりの床面積(3.3平方メートル/1人)
  • ベッドをおく場合の床面積(3.0平方メートル/1台)
  • 洗面設備の数(1つ以上/5人)
  • 便所の数(2つ以上・大便ができるもの/5人)
  • 換気、採光、照明、防湿、排水設備があること
  • 寝具の取り替え、定期的な清掃や換気
  • 洗面用水は飲み水を用いる
  • 入浴設備、器具は清潔を保つ
  • 宿泊者が人から人への感染症にかかり、重篤な症状、または疑いがある場合は保健所に連絡し、指示に従う

参照元:京都市住宅宿泊事業について | 京都市情報館

構造設備基準は部屋の機能などに関わりますので、事前に確認しましょう。

ポイント2: 水回りの設備は重点的に見られる

民泊を運用予定の物件では、特に水回りの設備が重点的にみられます。水回りの設備が特にみられる理由は、宿泊者の感染症リスクがあるからです。

例えば、循環式の浴槽(追い焚き機能付き、24時間風呂など)や加湿器が備え付けてある場合、宿泊者が入れ替わるごとに浴槽の栓をぬく、加湿器の水を交換し、汚れやぬめりが発生しないようにする必要があります。

これは、レジオネラという細菌の発生に関係しています。不衛生な環境だとレジオネラ菌が発生しやすく、菌は肺炎の原因です。宿泊者の健康に関わるため、保健所も重点的にチェックします。

保健所から民泊運営の許可をもらうために行うべきこと

保健所から民泊運営の許可をもらうために行うべきことは、以下の4ステップです。

  1. 保健所への事前相談
  2. 許可申請
  3. 施設検査
  4. 許可、営業開始

保健所への事前相談から許可、営業開始までスムーズにいくと数週間程度で営業開始できます。それぞれ順に説明します。

ステップ1: 保健所への事前相談

民泊を始めるにあたり、自治体の民泊や旅館業法担当窓口にて、届出を行う前に、事前相談を実施しているところがほとんどです。届出を行う前に確認することとは、以下の3点です。

  • 届出者が借りた部屋を民泊に使用する場合、貸主は民泊として利用することを許可しているか
  • マンションで民泊を行う場合、マンションの管理規約に民泊利用が反していないか
  • 消防法令適合通知書を入手しているか

3つ目の消防法令適合通知書の入手は物件を管轄する消防に相談が必要です。

ステップ2: 許可申請

許可申請では、1〜20の項目について申請を行います。サラリーマンの個人の民泊投資向けに必要な項目を抜粋しました。

  1. 商号、名称又は氏名、住所
  2. 住宅の所在地
  3. 営業所又は事務所を設ける場合は、その名称、所在地
  4. 委託をする場合は、住宅宿泊管理業者の商号、名称又は氏名、登録年月日、登録番号、管理受託契約の内容
  5. 【個人】生年月日、性別
  6. 住宅宿泊管理業者の場合は、登録年月日、登録番号
  7. 連絡先
  8. 住宅の不動産番号
  9. 住宅宿泊事業法施行規則第2条に掲げる家屋の別
  10. 一戸建ての住宅、長屋、共同住宅又は寄宿舎の別
  11. 住宅の規模
  12. 住宅に人を宿泊させる間不在とならない場合は、その旨
  13. 賃借人の場合は、賃貸人が住宅宿泊事業を目的とした転貸を承諾している旨
  14. 転借人の場合は、賃貸人と転貸人が住宅宿泊事業を目的とした転貸を承諾している旨
  15. 区分所有の建物の場合、管理規約に禁止する旨の定めがないこと

管理規約に住宅宿泊事業について定めがない場合は、管理組合に禁止する意思がない旨

参照:住宅宿泊事業者の届出に必要な情報、手続きについて | 民泊制度ポータルサイト

上記15項目について申請が必要です。中には取り寄せるのに時間がかかるものもあるため、事前相談が済んだら速やかに着手することがおすすめです。

ステップ3: 施設検査

申請が終わると、保健所職員の施設検査にうつります。施設検査は立ち会いが必要で、日程を調整しましょう。

申請内容にもチェックが入るため、虚偽の申請はできません。保健所職員からの質問もあるので、的確に答えられるよう、想定されるものは準備をすると安心です。

ステップ4: 許可、営業開始

保健所からの施設検査に合格すれば、申請が受理されて民泊営業の許可がおります。申請から立ち会い検査、許可が降りるまでの期間は数週間です。

ただし、自治体や時期で許可が降りるまでの期間に差があります。このため、全体的に余裕をもった申請が必要です。

民泊施設に必要な設備

民泊施設に必要な設備は以下の通りです。

  • トイレの数
  • 洗面設備
  • 入浴設備

台所も必要ですが、特に重点的に見られる水回りの3点を解説します。

トイレの数

民泊において、設置するトイレの数は宿泊者5人あたり2つです。2つのトイレを詳しく説明すると、男女別で、男性も大便をたせるものです。

なお、洋式、和式の区別はなく、何人かで利用する共同トイレで構いません。また、換気設備は必須です。さらに、トイレには独立した洗面台が必要です。

トイレの広さは自治体ごとに異なります。先に自治体に確認し、必要に応じてリフォームやトイレの増設が求められます。

洗面設備

洗面設備は利用しやすい位置に独立したものが必要です。耐熱性で、不浸透性の材料が使われており、流水受槽式になっていることが必要です。

清掃が簡単にできて、石鹸やハンドソープ、アルコール消毒用を置くスペースがあることが望まれます。タオルの設置もあるとよいでしょう。

洗面設備も宿泊定員5人に1つの割合で求められます。ただし、30人を超える場合では、10人あたり1つでよいため、30人では3つあれば足ります。このため、場合により、リフォームする必要が出てきます。

入浴設備

民泊には入浴設備も必要です。入浴設備といっても、浴槽は必須ではなくシャワーでも足ります。これらは共同での使用も認められています。さらに、トイレと同じ空間にあり、カーテンで仕切るタイプのユニットバスも構いません。

注意するのは、入浴設備は届出住宅に設置されている必要があることです。これは、近隣に公衆浴場(銭湯)がある場合、届出住宅の対象に含まれていない場合は、代わりに利用してはいけないことを指しています。

民泊は外国人宿泊者が多いことからシャワー設備で足りることもあるため、必ず設置するようにしましょう。

地方自治体の保健所の手続きの例

地方自治体により、保健所の手続きに特徴があります。ここでは、以下の3つの自治体について解説します。

  • 大阪市
  • 京都市
  • 東京都・豊島区

どちらの自治体もインバウンド需要があることから民泊に対する条例やルールをもうけています。それぞれ詳しく説明します。

例1: 大阪市の保健所への申請にまつわる情報

民泊を大阪市で行う場合、「住宅宿泊事業について」という特設ページがあります。大阪市では、インバウンド需要の増加による民泊施設の急増を背景に民泊に対する条例の整備が行われています。

特に、住宅街での民泊は近隣住民とのトラブルになりやすいことから、民泊を始める前に、周辺住民への挨拶や、地域の町内会にも説明する姿勢が求められています。

参照元:大阪市民泊事業について | 大阪市

例2: 京都市の保健所への申請にまつわる情報

民泊を京都市で行う場合、京都市民泊ポータルサイトを参照してから民泊事業を行う必要があります。

京都市もインバウンド需要、国内の観光客需要とともに多く、民泊についてのルールを特設ページを設置して明示しています。確認事項は京都市の条例です。例えば、騒音や景観に関する項目が細かく定められています。


参照元:住宅宿泊事業の届出について(受付窓口,手引き等)| 京都市民泊ポータルサイト

例3: 豊島区の保健所への申請にまつわる情報

東京都・豊島区で民泊を始める場合、まず、住宅宿泊事業法についてというwebページを参照します。確認事項は豊島区の条例です。特に注意したいのは、「事業の届出に際し、事前に行うこと」の5番目です。

(5)家主不在型の場合は、住宅宿泊管理業者との契約書の作成

宿泊者名簿の正確な記載のため、対面による本人確認と鍵の手渡し
苦情への速やかな対応:概ね30分以内の駆けつけが要件(引用元:豊島区住宅宿泊事業法について)

投資用物件での民泊で、家主が不在の場合、鍵の受け渡しと苦情応対を上記のように対応する必要があるため、代行業者への委託が必要でしょう。(参照元:豊島区住宅宿泊事業法について)

計画的に許可申請を行い民泊経営を始めよう | まとめ

民泊事業を始めるにあたり、許可申請を計画的に行うことは重要です。許可申請を行うにあたって、保健所では事前に相談できます。

各自治体の取り組みも参考に、事前確認と準備をして、保健所の施設検査をクリアし、民泊運営をスタートさせましょう。

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